ぼくはアメリカン・エキスプレスを愛している。
色々な種類のAMEXカードを6枚も所有しているが、
正直にいってそこに合理性はない。
投資家としては失格だろう。
完全に趣味の領域だ。
グーグルの親会社アルファベット(GOOG)は、驚異的な製品やサービスを作り出し、
料金を課すことなく公開することで、のれん(会計上の意味ではない)やそれによる
良質なカルマを手に入れている企業の典型だ。
しかし逆にもし、大盤振る舞いすることで賞賛を得る企業があるとすれば、
半世紀以上もそれをやり続けている企業がある。
それがアメリカン・エキスプレス(AXP)だ。
現金、飛行機のフライト、テーマパークの入場料、レンタカー、
ホテルのアップグレードに、ギフトカードを提供している
企業がもしあるなら、その名前を挙げてみてほしい。
あなたはまったく何もすることなく、すべてを手に入れられる。
年会費を払うことによって、どちらにしても買っていたものを
手に入れていることに他ならない。
グーグルとは違い、アメックスは顧客の個人情報を
侵略的で包括的なデータベースに加えたりはしない。
アメリカンエキスプレスは、与えて、与えて、与えるのだ。
地球上でもっとも利他的な企業だ。
2018年6月27日、アメックスは、ベンダーが顧客に一種類のデビットやクレジットカードの
の使用を指示することはできない、とした最高裁判決で大きな恩恵を受けた。
(これは個人的にもホッとした。)
アメックスは高い手数料がかかるので、加盟店は顧客に他のカードを使って欲しかったのだ。
同社は2018年第2四半期の純利益が16億ドル、
売上高100億ドル(前年同期比9%増)を計上した。
後払い金利の経済
このビジネスモデルを存続できる唯一の理由は、
この仕組みを理解せず、期日に請求書を支払い損ねることで
余分な金利を支払っている何千万ものカード所有者がいることだ。
どのようにしてこのような無形サービスで
27億ドルもの年間利益を稼いでいるのだろう?
ここではクレジットカードの基本的な仕組みは説明しないが、
ぼくたち(期日通りに支払う人たち)のタダ乗りを
支払い延滞者が支えている構図だ。
2017年は1億700万人のアメックス会員が1兆850億ドルを
クレジットで支払っている。
これはとてつもなく大きなリボルビングクレジットだ。
年会費
アメックスの優れた戦略は、この支払い延滞者ビジネスにとどまらない。
カードを持つことで得られる特権のために、カード所有者に高い年会費を
請求するという点で同業他社の中でも珍しい存在となっている。
アメックスセンチュリオンにいたっては現在、
100万円(税別)の入会金と50万円(税別)の年会費がかかる。
アメックスの総収入のほとんどは『受取割引料』として分類され、
加盟店手数料として知られている。
アメリカンエキスプレスは高い加盟店手数料を課すことで有名で、
競合他社よりも高い。
なぜ加盟店がアメックスを受け入れて高い手数料を支払うのかというと、
平均的なアメックスカード所有者は比較的裕福か、少なくともある程度
ぜいたくな暮らしをしている傾向があるためだ。
そういった顧客の獲得のために
高い手数料には価値があると考えられている。
同社の永続的なブランド力により、マスター(MA)やVISA(V)よりも
加盟店に手数料を請求することができるのだ。
取引の両サイド
昔は、アメリカンエキスプレスカードの多くは金利がかからなかった。
毎月請求書を満額支払わねばならず、そうしなければ会社は口座を閉じ、
取立代行業者を送った。
何十年もカード所有者に金利を課している他のクレジットカード会社とは
まったく対照的なのだ。
アメリカンエキスプレスは、
カード所有者を優遇し、加盟店に負担を
という独特の戦略を取っていた。
継続的な成長
アメリカンエキスプレスのサービスは4つの主要セグメントに分けられる。
米国のカード、国際カード、国際商業、そして国際ネットワーク&加盟店だ。
米国と国際の両カードの成長は、前年度よりもおだやかではあるが、
ひきつづき増え続けている。
昨年の米国の消費者サービスからの資金運用利益は57億ドル、
インターナショナルでは10.2億ドルに増加した。
これは直感に反するかもしれない。
米国よりも、それ以外の世界の国々のほうが早く成長しないのか?
たしかに収益は国際的に増加したが、米国外の市場への進出と、
リワードの提供に多くのコストがかかった結果だ。
消費者は、目新しさ、信頼性、多様性、高品質を好む。
しかし本当にリピートさせるものは、便利さだ。
カード所有者にとって、アメリカンエキスプレスをもつことは
現金を持ち歩かないシンプルでエレガントな方法だ。
加盟店にとって、アメリカンエキスプレスに加盟することは
敬意とほかとは違った顧客サービスを提供できることだ。
このどちらの顧客基盤を考えても、1958年のクレジットカード事業参入以来、
ビジネスは飛躍的に成長した。
会社は今日、ついに『本物のクレジットカード』(リボルビングクレジット)
を発行することで何十年にもおよぶ慣例を破壊した。
確実なことは、アメリカンエキスプレスは今後も裕福な人々のあいだで
愛用される支払い方法であるということだ。